【読書】ロリータ ウラジーミル・ナボコフ

 

ロリータ (新潮文庫)

ロリータ (新潮文庫)

 

 

有名な「ロリータ」を読んだ。

 

超有名な名作ではあるものの結末までガッツリまとめてしまったので一応隠します。

当然ながらネタバレが大量にあります。

 

 

 【あらすじ(普通に結末まで言ってしまっています)】

とある男の手記という形でお話は進んでいく。

とある男=ハンバート・ハンバートは9歳から14歳までの少女、中でも特別の魅力(美醜とはあまり比例しないらしい)を持つ少女・“ニンフィット”にしか心からの欲望を抱けないという性質を持っていた。

そんなハンバートはあるとき下宿先で出会ったドロレス・ヘイズという13歳の少女に一目惚れ。彼女と離れたくないがためだけに彼女の母親であるシャーロットと結婚するほどの執着を見せる。

しかしながらあるとき、こっそりつけていた日記をシャーロットに見られ、“ニンフィット”愛好やドロレスにゾッコンLOVEなこと、ドロレスのそばにいたいがためだけにシャーロットと結婚したことなど、1つ1つが離婚待ったなし級の重い事実を知られてしまう。

終わった、と思いきや、なんとシャーロットは直後に自動車事故で死亡。ハンバートの本性は誰にも知られないままになる。

ハンバートはこれ幸いとばかりに、サマーキャンプに行っていたドロレスを迎えに行き、シャーロットが病気で入院していると嘘をつきドロレスを連れ出した上、宿泊先で性行為に及ぶ。

その後、わりとあっさりシャーロット死亡をうちあけたハンバートは、ドロレスを連れて各地を旅するという完全無欠の誘拐犯ぶりを読者に見せ付ける。

途中でとある町に住み着きドロレスを学校に通わせたり、誰かに尾行されている気がすると疑心暗鬼に陥ったりしつつも、ドロレスとの一方的な蜜月の旅は2年間も続く。

が、あるときドロレスが体調を崩し入院。ハンバートが迎えに来る前に何者かと共に退院し、そのまま失踪する。

人生終了レベルに落ち込み錯乱したハンバートは無我夢中でドロレスを探し回るが見つからず、結局はひょんなことから出会ったリタという女性と一緒に暮らし始める。ちなみにリタは“ニンフィット”でも少女でもない大人の女性。

それから2年後、ハンバートのもとに突然ドロレスから資金援助をお願いする手紙が届く。ハンバートはドロレスを連れ出した何者かを殺害する決意を固めつつ、リタを残してドロレスのもとへ発つ。

再会したドロレスは17歳になっており、結婚して子供まで身篭っていた。そしてこの夫はドロレスを連れ出した人間ではなかった。

ドロレスは“ニンフィット”ではなくなっていたが、ハンバートは依然としてドロレスを愛しており、夫を捨てて一緒に来てくれるよう懇願するが、ばっさり断られる。ドロレスが自分を一切愛していなかったことを改めてつきつけられ落ち込むハンバート。

小切手を渡す代わりにドロレス失踪時に手助けをした人間を教えるよう迫るハンバートに、ドロレスはクレア・キルティという男の名を告げる。クレア・キルティはドロレスや母親のシャーロットと旧知の仲の劇作家で、背徳的な趣味をお持ちの方だった。

ハンバートはドロレスたちの家から立ち去った後、クレア・キルティのもとを訪れ銃で殺害。その後、わりとスピーディに逮捕される。

獄中でハンバートは手記を残す。ドロレスに愛されなかったことを嘆きつつも、文学という形でハンバートの物語を記すことで、芸術の中でロリータと共に永遠に生きると語り手記は終わる。

その後ハンバートは獄中にて動脈血栓で死亡。ドロレスも同年、出産時に赤子と共に死亡した。

 

【感想】

ハンバート・ハンバートサイコパスぶりにリアリティがありすぎる。

やっていることはもちろん、あれだけのことをしておきながら自分のことを紳士と呼んではばからず、基本的に自分が間違っているとはあまり思っていないところが。

 

第一章は面白く読んでいたけど、第二章は少しキツかった。

なぜかと言うと、第一章のドロレスは良くも悪くも“理想の少女”と言うか、小生意気でコケティッシュな、ハンバートの劣情をあおる部分ばかりフォーカスされているけど、第二章では汚い言葉も使うしワガママも言うし追い詰められてくると精神的に不安定になってくるし、もっと明確に言うとハンバートにとって都合の悪いことをたくさんするようになる。

そのせいでドロレスはごく普通の思春期の生意気な子供なんだなあということがビシビシ伝わってくるようになって、そんなごく普通の思春期の生意気な子供を相手にこんなことをしているハンバートのヤバさも同時に伝わってきて、キッツイなあ、と思いながら読んだ。

 

旅小説、恋愛小説、ミステリーなどなどいろんな読み方ができると言われている作品だけど、私はクライム・サスペンスとして読んだ。

他者への共感能力が異常に低く、“ニンフィット”ばかりを愛し、それ以外の人間は徹底してどうでもよく、“ニンフィット”ですら結局は自分の欲望を満たす存在としてしか扱わず、自分が常に第一で、言語能力が振り切れている男、の犯罪録として。

 

ロリータ・コンプレックスのバイブル」みたいに言われることがたまにある作品だけど、これはそういう話じゃないな、と読み終わって確信した。

ハンバートの人間性が完全に終わっているのでこれを「少女好きの人」全般に当てはめるとえらいことになるし、少女をものにはするけれど「大人の男と少女のロマンス」みたいな甘い話ではない。少女好きのための作品というよりは、一人の特異な男の物語に過ぎないと思う。

いやむしろそこがいいのか?よくわからん。

 

あと、ハンバートが「信頼できない語り手」の代表格みたいな存在のせいで、どこからどこまで信じていいのかわからなくて混乱する。

ことあるごとに自分のことを美男子やで女にモッテモテやでと言っているけれどどこまでマジなんだろうか。シャーロットに言い寄られたのも本当にお前のイケてるお顔のおかげなのかマジで。

しかしどのみち「俺ってマジ美しいわ」みたいなことを再三書いてしまえるナルシストぶりが、他人への乏しい共感性と自分第一な精神性にマッチしていて良い。(自分のビジュアルに自信がある=やばい、ということではなく、「指を鳴らすだけでどんな女でもものにできるぜ俺っちは」みたいな文章をわりと広範囲に見せる前提の手記に書いてしまえるメンタリティが強すぎる、という話。)

 

読み終わってもう一度序章を読むことでドロレスもあの後すぐに死んでいることがわかるのがつらすぎる。結局ハンバート自身も死んでいるし、2人が出会ったことで幸せになった人間は皆無である。泣ける。

 

なんかめちゃくちゃハンバートに憤っているかのような文章になってしまったけど、やばい奴だとは思いつつも、クライム・サスペンスとして面白く読んでしまったので、読んでいてハンバートに本気でキレるようなことはなかった。

これがハンバートや“ニンフィット”賛美に終始しているお話ならそうなったかもしれないけど、実際はもっと色彩豊かな話だし。

 

ラストシーンのカタルシスは抜群。